ふたつのAモール

長くなったので2つに分けました。
続きです。


季節先取りの第九、例のファゴットのところを聴きながら
「うわー、今年も年賀状書かなアカンな、って気持ちになりますネ〜」
と笑っていましたが、ブラームスのトリオをひと吹きしたら、ブワッと風がふいて、完全に秋。秋が全細胞に染み渡りました。

10/10カフェ・モンタージュさんでの公演に向けて、チェロの山本裕康さんが京都にいるうちに、絶賛リハーサルでした。コネッソンの間も、東京から帰ってきてからも、ずっと練習していました。キツかった〜
だけど良い具合に仕上がって、ホッとしています。あとは本番を待つだけ。

モンタージュの高田さんがつけてくださったコンサートのタイトル『ふたつのAモール』は、プログラムの2曲(ブラームスとフリューリンク)の両方がイ短調=a moll(アーモール)であることに、多分おそらく、アモール(愛)がかけてあるんだろうと思っています(未確認です)。深まる秋に愛の音楽。どちらもa mollで始まる2曲、曲順をどうしようか相談したんですが、明るい気持ちで帰っていただけるように、a mollで厳しく終わるブラームスでなくて、明るくA dur(イ長調)で終われるフリューリンクを後にしようということで意見が一致しました。それから、あの寂寞としたブラームスの始まりを、お客さんの耳も奏者である我々の心も鎮まった中から始めたいということもありました。
裕康さんとは、思えば短くないお付き合いですが、室内楽では初めての共演。近くで裕康さんのチェロを聴けるのも、初めて。だから、とても楽しみにしていました。どんなふうに聴こえるか、どんなふうに音楽を作られるのか、リハーサルはどんなか、それに対して、どんな私でいられるか。ブラームスのtrioは、私も少なからず様々なチェリストと共演させていただいてきましたが、皆さんそれぞれにしっかりと違って、そしてそれぞれに本当に素晴らしいです。裕康さんも、想像通り、想像を超えて、素晴らしかったです。裕康さんの描く音楽、思う音楽がどこにあるか、しっかり耳をそばだてて、感じて、そして私も私の思う音楽をもって、3人で音楽をつくる作業。リハーサルは、とても充実した幸せな時間になりました。
ピアノの塩見くんとは、それこそもう数えきれないほど様々な音楽を様々に共有してきた仲なのと、彼そのものが稀有なピアニストであることも相まって、もうわざわざ言葉にしなくてもだいたいのことはわかるし期待通りになる、不思議な信頼関係だと思っています。それでも、何度も一緒に演奏してきたブラームスの中にも、今回初めて一緒に取り組むフリューリンクにも、改めて彼の素晴らしさに感じ入るところがありました。
音だけのやりとりで、こんなに豊かに会話ができる、相手のことがわかったり、わかろうとしたり、わかってもらえたりする嬉しい時間を久しぶりに過ごして、ここしばらくずっと、楽器も音楽の仕事ももう全部、やめようかな、と思うばかりだった気持ちが、ちょっとだけ引っ込みました。やっぱり面白いんだもんなぁ。しんどいことがほとんどだけど。


そんなわけで、ようやくひと段落ついて、今日だけはおやすみ!朝から、ひと夏の猛暑と猛練習でカスカスになった楽器のメンテナンスに行って、遅いお昼に(大阪に行ったら必ず寄りたい、と言いたいところだけど、実際はたまのご褒美◎)生尾さんで文箱弁当をいただいて、これから整体です。明日からは遂に大学。だから、今日だけは。おやすみ!!