禁断の

10月最後の週末は、吹田メイシアターで、ちいさなおきゃくさまのためのコンサートに参加していました。

札幌在住の絵本作家 そらさんと、絵本「ほしをつかまえたおうじ」を題材にした読み聞かせコンサート。
読み聞かせコンサート、という言い方は私はあまり好きでないので、ことばと音楽でつづる、おはなしコンサート。

お話をいただいた時には心踊って、急に大町(長野)の栗林さとしさんが懐かしくなりました。栗林さんと一緒にさせていただいた「葉っぱのフレディ」や、「おおはくちょうのそら」や、土地に伝わる昔話の色々と音楽のコラボレーションを作り上げた当時の記録や録音や曲目リストを引っぱり出しては、おはなしと音楽のやりとりの機微や、ことばの作用、音楽の作用、その二つが融合する時の何ともいえないふくよかさ、全員でああでもないこうでもないと言いながら試行錯誤を繰り返した濃密なリハーサルを思い出して、次はどんなふうに作っていけるかな、と、楽しみにしていました。
今回は、私はゲストだったので、できることはほとんどなかったし、思ったようでなかったこともありましたが、コンサートが開演して、客席にたくさん集まってくださったちいさなおきゃくさまのかわいらしいおかおや、小さなおててがキラキラと輝いて見えて、彼らと一緒に来てくださったおおきなおきゃくさまのおかおも和やかで、胸いっぱいになりました。

また、栗林さんを京都にお呼びして、きっと、次のおはなしコンサートをしよう。できるだけ早く。そうしようと思いました。


今回は、ついに、禁断の、でも念願の。一度はやってみたかったけどやらないと思っていた、私の大大大好きな、サン=サーンスのファゴットソナタ第1楽章を、憧れて、吹いてみてしまいました!キャー
ずいぶん迷ったけど、こんな時でもないと出来ないと思ったのと、お話の最後のタイミングにぴったりだと思ったので、ふふふ。
憧れの曲。ファゴットが吹けたら、ピアノが弾けたら、どっちでもいいから絶対に演奏したかった曲。もう、ピアノの前奏がキラキラと始まった途端に涙が出ます。ファゴットの名手の演奏を間近で聴けて、その優しさ温かさそして音圧に圧倒されて、なんだ、音楽って、こんななんだ…と号泣した、若き日の思い出。クラリネットでは、あれほどには太い音が出ないし、ファゴットの切羽詰まったような高音の感じも少ないけれども、そして、2楽章以降はやっぱりファゴットでないとどうにもならないと思うけど。1楽章、やってみたら、音域は、なんとか、でも、他の楽器にしてはかなり、意外にうまくいって(←と、私は思っていて)、はぁ、幸せでした。緊張したけど。おうじが、星を追い求めたり、諦めたり、でもまた、といった気持ちの起伏や、空から舞い降りる星たちの優しいきらめきのような始まりや、また思いが空にたちのぼるような終わり方や、カミーユじいさんが人生のおしまいに書いた、懐かしい昔をやさしく時に鮮やかに思い出すような曲想が、とってもお話に相応しかったと思いました。だけど、アレを吹くって、吹いたって、誰にも言えてません。皆さんもナイショにしててください。はずかしいので笑。
あとは、王子がほしを捕まえるためにお城のしかけを動かしてギーとかガーとか頑張るところは、即決で、ヒンデミットのソナタ第2楽章にしました。一生懸命な感じと、それがちょっと的外れっぽい感じと、機械の感じというか、無機物な感じが、あの曲にはあると思います。
最初の、おしろのシーンのところで「展覧会の絵」(ムソルグスキー)の『古城』サックスのソロ部分というのは、ほんの初期の、半分冗談のつもりの提案だったんですが、そのまま通ってしまって慌てました。
あともうちょっと、クラリネットオリジナル作品が入る予定だったのですが却下になって、あれ、なんか、クラリネットの曲1こじゃん、ってなってしまいました。
他にどんな曲が採用されるのかも知らず、全体の曲構成の流れやバランスを見たり、おはなしと音楽の時間的な尺のバランスを相談することもなく、春の頃(マイスタージンガーで頭ぐるぐるになってた頃)に、とにかく挿入できそうな曲を出してみてくれ、と言われて、ひとまずサンプル的に出したつもりだったのが、次にはもうマネジメントさんが組んでくださった台本が上がってきたという次第で、全体としては色々アンバランスだった気もしないではないんですが、まぁでも。
こどもたちのやわらかい心が、おはなしや、音楽と親しくともだちになってくれたら嬉しいです。そして、大きくなったときに、子供の頃に想像していたよりずっと複雑で険しい人生を生きるのに、物語や、音楽は、いつでも、自分がどんな自分でも、いつもやさしく味方でいてくれるんだということを、思い出してほしいと願っています。