後期実技試験

カレンダー通りのお仕事をされている人に「休みの日というのはほとんど無いです」と、本当のことを言っても、大抵あまり伝わらないので、

「まぁ、365日おやすみみたいな仕事なんで、ははは」

と笑ってごまかすようにしています。
ごまかしがきかない関係になった時がややこしいんですが、まぁ、それは置いておきます笑。
好きを仕事にしてしまうのは、なかなか簡単な人生でないように思います。


もう20年、そんな生活をしているので、ある程度のことは引き受けて、耐性もついてきたつもりでいても、想定になかったような難しい曲が突如投下されて、(つ、詰んだ…)となる時が、まぁ、時々、起こります。
そして、たまたまそれが、スケジュールがほんとにパツパツな時にやってくることも、ありまして…

情けないことに、ただいま切羽詰まり中です。どれくらい切羽詰まっているかというと、空になって洗濯ができないと気づいて買いに走った洗剤の詰め替え用を、容器に移すのに、満タンになるまで待てなかった笑。1/3くらいは入ってたから、しばらくいけます。
切羽詰まるとは、時間的なこともあるけど、それ以上に心のゆとりの有る無しの話であるということがよくわかります…

今日のリハーサルの後は何時にどこだったか、学校には何時に行けばよくてその後は何を持ってどこへ行くんだったか、今日はどこのすきまに練習ができるか、音を出せない時間に何をやっておくべきか、電車に乗ってる間に誰にメールを返すんだったか、歩いてる間に電話できるのはどこか、今日は何時に誰が来るか、そして、いつまでに何をどれくらい吹けるようになっておかねばならぬのか!(←これが、一番問題!)
毎日綱渡りで、明日のことは手帳を見ないと思い出せなくて、今日は今日に集中。寝る時も全力。
忙しいとは口が裂けても言いたくないけど、私たちの職種特有だと思うのは、

「どれくらい練習したら、〈その日〉までに間に合うか、毎回、間に合ってみるまで分からない」

間に合わなかった、ということも、練習したけど出来なかった、というのも一切許されない世界で、この大きな不安を抱えながら、本当は自分の練習に充てたい多くの時間を

【人を教えること】

に割かざるをえないことだと、思っています。

自身が表舞台で現役で日常的にプレイしながら、必死に後進の指導もしないといけないのは、世界広しといえどもオケマンくらいじゃないか。それは、学生の頃から思っていて、さっきまで定期に乗っていたらしい先生が頭から湯気を出しながら楽器を担いでレッスン室に向かって行かれたり、慌てて楽器を片付けながら「これから本番でね」と弱く微笑まれる様子を、眩しいというよりは、眩しいを通り越して、一体全体どういうことになっているんだろう、どうやって時間のやりくりをされているんだろう、と、信じられない思いで見ていました。私自身は、大学での担当教官は教授だったので、普段はそんな様子を傍らで見守るだけでしたが、志願して現役オケマンの先生に習うとき、教えてもらう内容そのものについてはもちろんですが、それよりも、先生の貴重な1時間を奪うことに対して、一体いくらお支払いしたらよいのか、途方もない気持ちになりました。とはいえ実際は、貧乏学生には恥ずかしいことにいくらも払えないので、せめて全力で準備して、全力で教わりました。それしか、できることがありませんでした。

私は、オケマンになるべくしてなったような器でないのと、人より練習量が必要なので、いつも余裕がなくて、どうしよう、練習したい、どうしよう、間に合わないかもしれない、練習したい…のに!!と、この歳になってもまだ震えながら暮らしていることが恥ずかしいです。
それでも、現役選手にしか教えられないことがたくさんあると分かっているからそれをするし、そこに大変な価値があることを心底知っているから、そこから逃げるわけにはいかないとも思っています。私たちも若い頃、先生方にそうやって教えていただいてきたんだから、そうなんだ、これは恩返しなんだ、と。私が先生方から教わったほどのことができるかはわからないけど、私は私にできる精一杯を。いつも、そう、言い聞かせています。


後期試験と卒業試験でした。新しいホールのせいか?みんな急に上手くなったのか?笑、どっちもかもしれませんね。環境も、人をつくるから。
みんな、ちょっとずつ、できることが増えて、4年の間に、見違えるように大人になる。
そうだよ、上手くなるってのは、正しい技能と知識を身につけた上で、自分の思いを、どれだけ音に乗せられるようになるかなんだ。発音に、音色に、音と音とのつながりに。
誰が上手いか、誰より上手いかではない。自分の声で自分の歌をだんだん歌えるようになってきた時、あるいは、歌いたいんだと本当に思うようになった時、そこからようやく、音楽の面白さとのお付き合いが始まると思っています。

いい演奏と、成長が、センセイにとっては何よりのご褒美。
もっと練習したかったけど(涙)、まぁ、いっか!
来年度もまた、がんばろう!