薔薇の騎士

遂に、初めて真実の愛にめぐり逢った(ような気がした)時のことを、覚えていますか?


びわ湖ホール プロデュースオペラ『ばらの騎士』、絶賛稽古中です。
練習場でオーケストラのみのリハーサルを3日間、びわ湖ホールに移ってB.O.(歌合わせリハーサル)をA.B組合わせて3日間、1日オフを挟んでいよいよ今日からノンストップで

2/27 A組H.P.(通し稽古)
2/28 B組H.P.
2/29 A組G.P.(ドレスリハーサル)
3/1   B組G.P.
3/2   A組本番
3/3   B組本番

です!
長い長いワーグナーの数年を経て、A.B組の2つがあるのが久しぶりで、日によって微妙に間合いが違うことや、それぞれの稽古と本番が2回ずつあるのも久しぶり。1日(全幕を通す)が永遠のように感じるよりはマシなような、もう忘れたような。

クラリネットは、ピットのオケ中は4人。

①Bb管、A管、C管持ち替え
②Bb管、A管、C管持ち替え
③Eb管、D管、Bb管、A管持ち替え
④Basscl(inBb/A)、Bassethorn持ち替え
(これに加えてバンダのオーケストラにもクラリネットが3人います。)

つまり、オケ中だけで12本のクラリネット。
R.シュトラウスらしく、全てのクラリネットの音色の違いを存分に駆使して書かれているので、長いのから短いのまで、相当キャラクタリスティックに書き分けられています。だから、全員大変!!いくらエスクラだからと言ってもそんなことまでさせたら可哀想、バセットホルンの音でしか出せないカラーなのは理解するけどバスクラと兼務は気の毒、てっきりエスクラの独壇場だと思い込んでいたらC管だった(←わたし!!)…というわけで、私と祐子さんは多分通常営業の2人分くらい働いています…手が千切れそうなのはもちろんのこと、もはや肩が取れそうです…慌ててさらった私が悪いんですけど。。


難所だらけの恐ろしい譜面で、最初の数日はリハーサルが始まったそばから

(帰りたい…)

と心の声が漏れるばかりでしたが、その後はだんだんに「吹けない自分に慣れて」きて、薄く笑いながら、まだまだ途方もない気持ちでした。でも諦めてはいけないと思って、毎日毎日、リハーサルの前と後に手がもげるほど練習していたら、本当に死にそうになりましたが、ひとつ、ひとつ、だんだん少しずつは何とかなってきて、今日、ついに、1幕が何となく短く感じた気がして、そして全幕通りました…
(連符が速すぎること・音の並びが覚えきれないこと、それから、C管の分量が思ったより多くて、いつものサイズと縮尺が違うせいで指がモヨモヨになるのが、手こずっている1番の原因です。人生でこんなにC管を練習する日がくるとは思いませんでした。全60ページのパート譜のうち、A管とC管の配分が同じくらい多くて、C管は小さくて指がモヨモヨする、C管の後にA管を持つといつも以上に巨大に感じて苦しい、そして最も思い通りに吹けるBb管のページは、多くはないものの、激ムズ!)


でも、やっぱり極上に美しいオペラなんです。『ばらの騎士』より美しいオペラはないと思います。音楽も、言葉も。何回も何回も泣きながら観ていた時は、吹いたらこんなに大変だったとは思わなかったけど。
愛の悦びの素晴らしさと、若い情熱の煌めき、自分の思いと裏腹に変わっていってしまう心の、どうしようもなさ。諦め、愛したひとの前途を祝福し、退くひとの美しさ。それらが、見事に、音楽で、ハーモニーで描き出されていくから、ちょっとくらいむつかしくても、しょうがない。リヒャルト・シュトラウス万歳です。くやしーい!
クラリネットは、もちろん、どんな場面にも、どんなキャラクターにも、どんな感情にも、全部対応できるので、どこにもここにも出てきますが、マルシャリンの諦念こそは、クラリネットの面目躍如なので、しっかり、寄り添いたいと思っています。


チケット、もうちょっと有るようです、来ないなんて、そんなもったいない。ぜひ、おいでくださいね◎