羽ばたけ若鳥たち

3/6。21時に終演、お客様をお送りしたら着替える間もなく嵐のように撤収して、打ち上げを終えて生徒たちを見送ったら終電が終わっていたのでタクシーで帰って、寝て、起きて、練習場で楽器を構えたら、さっきまでびわ湖でジークフリートを吹いていたかのような疲労感と幻覚に襲われました…きゅ、休憩したい…

…、というのが、昨日の朝のことでした。

改めまして、多くの温かいお客様のお見守りと、ご協力くださる方々のおかげをもちまして、なんとか大きなトラブルもなく【京都市立芸術大学クラリネット科 小谷口直子門下生による発表演奏会】を無事に終えることが出来ました。お心寄せてくださいました全ての皆さまに、心より感謝申し上げます。
(共演者のみんな、本当にありがとう!)

今回は、初めての試みで、生徒もあらゆる意味で不慣れなことが分かっていたので、あえてコンサートタイトルに私の名前を入れてもらい、そして何かあれば私が全部引き受けるつもりで、演奏面もそれ以外もです、覚悟を決めて挑みました。運営面ではまだまだこれからですが、少なくとも演奏に関しては、彼らは本当によく踏ん張って、本番に今できる全てを出しきってくれたと思います。立派で、誇らしい姿でした。

私が非常勤講師として着任させていただいてからこの春で丸4年になります(来年で任期終了です)。舞台の上でこそ学ぶことがあると信じて、普段から学校では試演会など盛んに重ねてはきましたが、大学の名前を背負って学外で演奏会を開くこと、有料のコンサートであることは、彼らに格別の緊張感と、重圧を与えたことと思います。そして、いつも応援してくださるご家族や、お世話になっている先生方、また、自分たちの演奏を〈お金を払ってでも〉聴きたいとお集まりくださった一般のお客様方の前で、日頃の研鑽の成果を発表できる喜びは、実技試験やコンクールでは到底得られないものであったことでしょう。勝つために演奏するのではない、完璧さや正しさだけを求めるものではない、人の心に届くものでありたい、そして誰かに聴いてもらうに足る価値のある演奏でなければ…そのことを、鮮やかに学ぶことのできた1日となったことと思います。
私に出来ないことも、教えてやれないことも沢山あるのです。私に出来ないことは、他の人の力を借りたり、色んな所へ自ら赴いて大いに勉強してきてほしい。だけど、私は少なくとも、オーケストラで演奏する喜びは知っていて、そして、リサイタルを何度も自分で開いてきた経験があります。私に出来ることは、彼らが望むなら、惜しみなく伝えてあげたい。そんな思いで、今回は、普段私が自主リサイタルを開く時と同じ要領で、準備段階から生徒たちに寄り添うよう努めました。ご案内状をお出しすることも勉強させたかったし、印刷物の細かいチェックや、当日会場での様々な用意、ステージでの振る舞いや、お越しくださったお客様への感謝…何もかもは行き届かず、至らぬ点もあったこととお詫びいたします。そして私もまだまだ勉強の途中なので、生徒たちと一緒にたくさん学ばせていただきました。

一方で、彼らに、すでに敵わないこともありました。生徒たちは、私が学生だった時よりずっと立派なドレスを既に持っていて、朝から髪を巻いて来ていたり(私、そんなこと、したことないです!笑)、本番前の楽屋ではイッチョマエに入念にお化粧していたり笑。ちゃんとレディーでした笑。放っておいても勝手に育つ部分もある、というのも、大きな学びでした。私も見習います(来世…)。

最後にひとつ反省とお詫びをさせてください。
当日、開場してから、開演や閉演にあたってのご挨拶をどうするか、について、誰とも何にも相談できていなかったことに気づいたのです(私が前半の最後に演奏することにして、簡単にご挨拶と、休憩時間のお知らせを私がすることは決まっていました)。誰かに頼もうかとも考えたのですが、開演時間が刻々と迫って、皆の顔が引きつっているのも見え、このタイミングで急に喋る負担をかけるのは可哀想と思い至りました。それで、結局、会の最初も真ん中も最後も、私がたらたらとお話しすることになってしまいました。お子さん方の声を聞きたかったとお思いの親御さん方もいらっしゃったことと思い、陰で見守るつもりだった私がいちいち目立つ結果になってしまったことを大いに反省しております。喋るのもまた勉強!経験!この反省は次回に必ずや生かしたいと思います。


演奏会開催を決定した昨年の暮れから、何をしていてもこの会の準備や段取りの心配が頭から離れることはなく、仕事に向かう移動中や、リハの合間、お風呂の中や寝る前…多くの時間を生徒たちそれぞれとのやりとりに費やしました。とにかく大成功させてやりたいと、彼らに嬉しさを味わわせてやりたいと、必死でした。本番は10人分の緊張をして、あぁ、昔習っていたピアノの先生は、発表会のたびにこんなに大変だったんだろうかと、今回のために新調したピアノの先生ふう(イメージ!笑)のワンピースで当日走り回りながら、そんなことを思ったりもしました。

舞台の上で、そしてその前後で今回彼らが得た経験は、きっとこの後、さまざまに彼らの中でふくふくと育って、大きな宝物となり、この先続く道を歩く助けとなると思います。
このような機会を彼らに与えてくださいました全ての皆様に、心より感謝いたします。
そして、彼らの演奏を聴いて、あぁ僕も私もこの学校で勉強したいな、と思ってくれた若い人がいたとしたら、ますます嬉しいです。


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親鳥は、明日は兵庫芸文センター、明後日は名古屋の芸術劇場で本番!
無事カッコウ鳴けますように…