憧れる背中
京都の桜が満開、とテレビが言っていました。いや、まだまだ。これからです。明日はお天気が良いようだからもうひとつ咲き進んで、だけど日曜日の雨が止むまでは、待てる蕾は先を急がず待っていてほしい気持ちです。
今日の定点観測↓
北大路橋から、北側↑と、南側↓。
まだまだ、これからです◎
神戸新聞、校正の乱(いつもご担当者さんにご迷惑をおかけしておりますすみません)を終え、正真正銘、生きた心地が戻りました。
あまりに嬉しくて、今日はリハーサルを終えて帰宅してからレッスンの生徒を迎えるまでに、たぶんもう着ない冬物毛糸類の洗濯祭をしながら床と玄関と外階段の掃き掃除そして拭き掃除をしました。ら、更にくたびれ果てて、こりゃ失敗したと思いました。夜の練習を頑張り終えた後は、大渋滞していた「やることリスト」のいくつかもスムーズに片付いて、あとは早く寝て明日の本番に備えるのみ!
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ドヴォルザークの7番を、初めて吹いたのはいつだろう、と思いながら、リハーサルに居ました(思ってるだけで調べたりはしない)。オーケストラで1番クラリネットを担う難しさについて、手先や舌先のテクニックでない、もっと大きな問題にボカンとぶち当たって、ものすごく苦しんで、ものすごく勉強して練習して、必死にトライアンドエラーを繰り返しして、ボロボロになりながら、やっと、少しだけ何かを掴めたような気がした、その時の苦しさと嬉しさが楽譜のあちこちから今だに溢れだしてくる感覚があります。
弦楽器のように摩擦の抵抗を感じるようにして音を出すこと。弦楽器のようにふくよかに時間を泳いで自由に豊かに歌うこと。そうでありながら、舞台の後方にいる管楽器特有の「時差」と戦って泳ぎ負けないスポーティで鋭敏な身体感覚を持つこと。そして何よりいちばんは、あの頃、清水さんが居たこと。フルートとクラリネットがユニゾンで歌ったり、フルートと同じ旋律を続けて吹いたりするたびに、私は清水さんの背中(あるいは後頭部)を食い入るように見つめ、一体どうしたらあんな風になるのか、ずっとずっと、憧れて、追いかけて追いかけて、追いかけていました。どんな低い音も、どんな弱い音でも、清水さんの音はいつもオーケストラの上にくっきりと浮かび上がり、その場を完全に支配し動かす力と華がありました。一体どんな息で、どんなことを思って、何を聴いて、何を聴かずに、何を見て、どうやったらあんな風になるのか、鳴るのか、ずっとずっと、考え探し続ける10年余りを、清水さんの真後ろで過ごさせてもらいました。そんなことを、まぁどの曲を吹いても今だに思うんですが、どうやらドヴォルザーク7番は、その中でも特に清水さんへの憧れと彼から学んだことをたくさん思い出します。清水さんに直接具体的なアドバイスを乞うたことはほとんどありませんが(緊張して、最後までうまく話しかけられないままでした笑笑)、こうかな!と思って吹いてみて、清水さんとバッチリ合ったら
(合ってた!!)
と狂喜する、うまく行かなかったら原因を探り次の方法をトライする、ただその繰り返し。私は若い情熱に任せて清水さんの背後で遠慮のカケラもなく試行錯誤というのか実験というのかをその背中に浴びせ続けていたわけですから、まったく赤面ものです。でもそれを、清水さんはいつも黙って笑って引き受け続けてくださっていた。感謝しかありません。
今は上野くんの若い背中を見ながら、彼に学び、そして私にできることを考えています。
広上さんもスイッチ入ってfull of Jun-ichです。明日は楽しんで頑張ろうと思います◎
お花見兼ねて、ゆるりとお出かけいただけたら嬉しいです。
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その、上野くん大活躍の、いつぞやのロームシアターでの公演が、無料で動画公開されています↓
園田隆一郎指揮、ストラヴィンスキー《花火》《火の鳥》、ドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》、ラヴェル《ボレロ》《シェラザード》。
冒頭のアルミホイルマンの皆様には、ついついタケモトピアノ工房を期待してしまう自分に関西人の血を感じ、そしてその次の納豆の妖精みたいなダンサーさんは、明日の朝、納豆ご飯を食べる時に思い出しそう。ボレロの最後があんなえげつないことになっていたとは露ほども知らず、絶句でした。こわい。。そしてその後に森谷さんが
「熱(あじ)ぃー… 熱(あじ)ぃー…」
と歌い始めるようにしか聞こえなくて、ホラーだと思いました…
なんてこった。ゲイジュツは思ったより爆発です。でも、あの場で吹いていた時には想像もしなかったほど幻想的な仕上がりで(オーケストラが、あんなふうに影絵のように映ってるのが、とても綺麗だと思いました)、反響板も天井もない砂漠のような環境で悲しく吹いていたわりにはマイクが綺麗に音を拾ってくれていて、ちょっこし感激しました。
無料視聴は一ヶ月間だそうです。
良かったらご覧いただけたら嬉しいです。
(私も、あと《火の鳥》を観ます)
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