信じること信じられること

NHK京都放送局の夕方の番組「京いちにち」で、私たちのシェフ広上淳一マエストロについての特集(前編)が放送されました。
京都だけでしか流れないのが本当に残念。広上さんの魅力いっぱい、私たち京都市交響楽団との関係についても素敵に紹介していただきました。
広上さんに常任指揮者として来ていだいてから、今年度で3期目、まる9年が経ちます。来年度からの第4期も引き続き延長していただけることが決まったので、次の4月からは10年目がスタートすることになります。私は広上さんが来てくださるより数年前に入団しましたので、ひとつのオーケストラがまざまざと変化していく様子を、まさに文字通り“体験”することができました。最初から上手いオケに居たらしなくて良かった苦労もいっぱいあったし、まだまだ出来ないことも出来るようになりたいことも頭の痛い課題も沢山あるけど、でも、何がどういうふうに作用して、どんなふうに変化していったか、私は中にいて全部見て感じることが出来た。これは、私の人生においてとても大きな財産になりました。だから、これからいい時ばかりが続かなくなっても、出来るだけ踏みとどまれるように、賢明な振るまいのできる人間でいなければと思うし、できると信じています。頑張ります。

「広上さんがシェフになられて、オーケストラはどんな風に変わりましたか?また、具体的には広上さんはどんなことをされましたか?」
これが、インタビューのお題でした。数人のメンバーがマイクを向けられていたので、それぞれがそれぞれに答えたと思いますが、私はこんなことをお話しさせていただきました。
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広上さんがシェフとして来てくださって、一番最初にしてくださったのは、私たちを信じてくださったこと。当時の私たちには出来ないことも沢山、改善しなきゃいけないことも、整理しないといけないことも沢山ありました。だけど、まずはぐっと黙って、「君たちは素晴らしい音楽家だ、きっと一流のオーケストラになる」「僕は君たちを信じるから、君たちも僕を信じて明るくやってほしい」そんなことをしきりに言ってくださいました。
その時の広上さんの真意がどれ位のものであったか、それは分かりませんが笑、とにかく、私たちは、初めて(又は久しぶりに)リーダーに認めてもらえたような、信じてもらえたような、そんな気持ちになりました。
一度信じてもらえたオーケストラは、今度は仲間同士を信じられるようになった感覚がありました。まずは相手を信じて、自分も心を開いて、やってみる。広上さん以外の指揮者の方がゲストで来られた時にも、知らない指揮者の方がいらしたり、ちょっと一癖ありそうな(!?)方が来られたりしても、警戒するよりはまず信じてやってみる。相手のいいところを見つけて、いい関係を探そうとする。そんなふうに、オーケストラの雰囲気が変わっていった気がしています(だから、京響は、指揮者によって全然違う音のするオーケストラになったと思っています)。
それから、広上さんは、待ってもくださった。私たちの状態が少しずつ良くなるのを見極めて、今!という絶妙のタイミングで、小さな宿題をひとつずつ授けてくださいました。待つ、ということと、時機を見極める、というのは、それはそれは、広上さんの見事な策士ぶりをみた思いでした。まるで真田信繁さながらの!真田丸終わっちゃった…
それから、広上さんが京響の内側(私たち)へ、そして外側に向かって折々にかけてくださる、言葉の重みと愛情です。
わたしたちの知らないところで、京響のことをどんなふうに気にかけてくださるか、そんなことはひとりでに聞こえてきます。どこへいても、いつも考えてくださってる、という安心が、私たちをいつも勇気づけ、音楽を伸びやかにしてくれました。(後略)
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…のうち、ごく一部ですが、でも一番言いたかったことをうまく切り取っていただけて、ちょっと映していただきました。

オンエアを見ていて、広上さんが京響とのこれまでの時間について
たぶん死ぬまでそう思うと思う、と仰ってくださってるのを見て、

広上さぁん(T_T)

とてもとても嬉しかった。
泣いちゃった。


もちろん、私自身にも意地もありました。
たぶん励ましのつもりで、京響で頑張りはじめた頃の私に
『田舎のオケマンで終わるなよ』
と言った人がいました。
私は自分を受け入れてくれたオーケストラに心底感謝していた(当時も、今も)し、京響をロクに聴いたこともない人に「田舎のオケ」と言われたことが悔しかった。もちろん、東京で7年勉強して関西のオケに入って、正直戸惑う事も多かった。だけど、不平不満を言いながら居続けるのは違うと思った。私はここで私のやれる事をやる。無理だと思ったら逃げよう、だけどやる前に逃げるのはやめよう、自力で逃げる力がないなら黙ってここで働こう。だけど、いつか、田舎のオケなんて言わせないオケになろう!…私には、どうしても京響でなければいけない理由がありました。それは清水さん。あの人の背中を追いかけるだけで、充分すぎるほどだった。あとは、広上さんが来てくださってから。これは変わっていけると思った。若かった私にも、動けるタイミングのあとに動けなくなる時期が来る。動けなくなったときに、「自分の選択は間違ってなかった」と胸を張って言える自分でいたい。これが、私の、唯一の意地でした。

やれることは、全部やった。
私の選択は間違ってなかったし(今のところ)、
これからも、やれることを全部やる。

サントリー音楽賞受賞記念の東京公演(2017年9月18日)の演目のひとつに、ラフマニノフの2番が決まりました。
これは広上さんからのエールだと私は勝手に思っているし、私は広上さんへの感謝を込めて3楽章を捧げたいと思っています。

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NHK京都放送局「京いちにち」広上さん特集?・後編は、12/22(木)18:30〜放送予定です。
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でも…
今なら、あの人が「田舎のオケで終わるなよ」と言ったのではなくて、「“田舎のオケマン”で終わるなよ」と言った、そのことが、とてもよくわかります。都会のオケか田舎のオケかという話ではなかった。努力しない化石になってはいけない。それは、これからの自分への戒めにしたい。


久しぶりにラニオンさんへ。いつお邪魔しても、季節ごとの、目にもお腹にも元気になれるサラダ。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • Naoko

    2016.12.19 13:42

    大統領さま いつもありがとうございます。見守ってくださる皆さまにもそのように感じていただけた9年間であったならば、これほど嬉しいことはありません。来て良かった!と思ってもらえるsomething specialなオーケストラを目指したいです。 今後ともどうかお見守りください。ありがとうございます!
  • 小谷口さんが事前に告知していただいていたおかげで、「京いちにち」、見逃さずに済みました。また翌日は、くるりの岸田さんと京響の柴田マネージャーを追った記者リポートで、先週はさながら「京響ウィーク」のようでした。 広上さん=京響の9年間は、私たち聴衆にとっても、京響が世界的なオーケストラへ躍進を遂げていく過程を間近で体感できた、心躍る幸福な9年間でした。契約が更新されたこと、大変うれしく思っています。 今年はあと、23日の「グルッペン」と28日の「第9」の演奏会に行く予定です。楽しみにしています。