七転び八起き

尺八とお琴がセットで聴こえてくると、なんか急にうどんが食べたくなってきます。小谷口です。

着物のコンサートが終わりました。
指揮は、ウィーン時代の友で、同い年の、垣内くん。ウィーン当時、指揮科学生として奮闘していた彼とは、ほんの束の間だったけど、そしてお互いもう30超えていたけど笑、しっかりと、学生時代のような甘苦い思い出があります。皆でくだらない遊びをしたり、Oper(オペラ座)前のカフェで彼を待ったこともある気がします、音楽の話を侃侃諤諤やりあったこともあるし、まぁ彼はもう当時指揮科ではすっかり古株だったので、後輩学生が振る指揮科オケでティンパニ(ウィーン式の笑)を叩く彼とよく共演したことも思い出です(結構上手でしたよ笑)、室内楽で一緒にピアノを弾いてもらったこともありました。
私が帰国したのちに彼がブザンソンを獲って一躍世に躍り出たあと、何度か京響にも振りに来てくれて、ティンパニじゃなくて指揮を振る彼を嬉しく思ったり笑、突然の嵐のように環境の変わった彼を心配した時期もありましたが、今回久しぶりに会って、コンサートホール近くのコーヒー屋さんでエチオピアコーヒーを飲みながら話す彼の顔が、Operのカフェで話した頃の顔に戻っていて、でも話すことは全然違っていて、何か嬉しかった。垣内くんの表情も緩んで、前よりよく喋ってくれる気がした。嵐はひとつ過ぎたんだなと思いました。嬉しかった。
色んなことが、…嫌なことや、ピンチや、嬉しいことや、悩みや、苦しさや、優しさや、大きな仕事や小さな仕事、人との出会いやぶつかり合い、泥をのむような思いや、長い迷い道や回り道…色んなことが、人を変えていく。良くなかったところから良くなっていくとか、どこが⚪︎でどこが×とか、そんな単純なことではなくて、ただ純粋に、その「変わっていく」ことが、とても尊いし、素敵だし、面白い。音楽のこの道を歩いてみて感じるのは、本当にそのこと。自分自身についてもそうであるし、仲間についても、それから偉大なマエストロにだって、それは感じます。前回と今回が、誰1人として同じじゃない。すべて変わってゆくもの。移ろいゆくもの。得るものがあれば失うものがあって、変わることもあれば、その人そのものの持つ変わらない部分もある。それが、その人の音楽に、如実にあらわれる。だから面白いし、若かった頃に気づけなかったことも、気づかなかったからこそあった勢いも、今出来るようになったことも、これから出来なくなっていくことも、失うものの代わりに新たに見えるようになるかもしれない景色の予感も、何もかも、ぜんぶが愛おしい。友だちは、その変わっていく全部をゆるやかに受け止める存在でありたいし、そんな友だちがいてくれたら、安心して変わっていける。

…話が逸れました。

垣内くんとは、白髪の話と健康の話をしていたら時間がきて、コーヒー屋さんを出ました。お互いもう初老の春です。笑


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後期日程だった京都芸大の合格発表も終わり、これで全国的に主な受験シーズンは終了したでしょうか。

京都芸大は規模の小さな学校なので、残酷にも狭き門であり、合格できた子もあれば合格できなかった子も多くありました。
合格できた子が◯で、合格できなかった子が皆同じように×だった、という簡単なものではありません。長く長く続く音楽の道のごく入口での、それぞれの段階、様々な状態でこの冬を終えたのだと解ってほしい。時には冷静に、謙虚に賢く自分の足りないところを認識し受け入れ次への糧とする、その能力も確かに音楽を志す者に求められるものです。一方で、ぜんぶダメだったと、自分を全否定してしまうネガティブさや頑なさは、自分自身を殺してしまうことになる。これまでの自分の頑張りは一旦しっかり認めて褒めてあげて、ちょっと休憩したら、また、ゆっくり前へ、その人なりの“前”に進んでほしい。最終合格できた人にも、嬉しい春休みが終わった後は、今度は一気に厳しい現実が降りかかってきます。たぶんキツかった受験生活よりずっとタフな学生生活になるはずです。それが音楽大学。でも、出た後はもっと大変。がんばれ!

法輪寺さん(通称だるま寺)の達磨堂で、大小も顔かたちも様々、あっち向いたりこっち向いたりだいぶ自由な沢山の達磨さんに囲まれてボーっとしてたら、試験で聴いたあの子やこの子や、知ってる子も知らない子もみんなの顔が次々と浮かびました。
(正面から撮るのは気がひけたので、前列の皆様の後頭部から失礼しました)

思ったように進めない時もあるし、全然想像通りじゃない時もあるし、こんなはずじゃなかったと思うこともある。自分が前だと思い込んでいた方向が、実は前とは限らない時だってある。音楽が全てだと思っていたけど、もっと大事なものが見つかるときもある。未来を予測する能力が無い代わりに、今いる場所を最良の出発地にする力を、私たちは持っているのだと思います。
若いみんなが、それぞれに、しなやかに新しい春を歩き出せますように。


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いよいよ明日からマーラー8番のリハーサル。まだ好きになれない。だんだん好きになっていけますように(*人*)
法輪寺の帰りにピーカンパイとレモンティー@シーシーズ

2コメント

  • 1000 / 1000

  • Naoko

    2017.03.23 13:45

    Akiさま、いつもありがとうございます!絶賛リハーサル中です。音が大きすぎて耳の危険を感じております。。 お楽しみいただけますように…!
  • Aki アキ

    2017.03.22 15:24

    こんにちは。いつもブログ楽しみにしています。  思えば2015年12月に次期の京響定期スケジュールの冊子をみて、京響60周年記念のシーズン最後にマーラー8番をもってきたか!という驚きと同時にこれは広上さんのさよならコンサートだと本気で思いました。 それ以来、絶対にこのコンサートは外してはならないと思いで何度も何度もこの曲を聴き続けました。 もともとこの曲は1部のインパクトが強すぎて敬遠してたのですが、今では2部が好きで、中盤以降のアダージッシモから栄光の聖母のソロ、最終章の神秘の合唱からフィナーレまで何度聴いても感銘を受けています。 演奏会すごく楽しみにしています。 終演後は広上さん、歌手、コーラス、オケの皆さまの最高の笑顔とホールが喜びで満ちあふれる演奏会でありますように。