嬉しい共演
小さい高い音の緊張から解き放たれた朝。
久々に猿山に来て、おさるさんを眺めていました。
でも、私のそんなことより、大合唱団の皆さまが、本当に素晴らしかった。今回は何よりまずそのことに感謝したいです。最初の輝かしい第一声から最後の渾身の弱音まで、私たちオーケストラは合唱団の皆さんの気迫を背中でひしと感じながら、ひと声ひと声その度ごとに感激していました。その街にオーケストラがあるというのは、そうは言っても全国からプロが集結するもの。でも、その街の合唱団が素晴らしいというのは、もう、その街そのものの芸術文化レベル…レベルという言葉はあまり美しいものでないですね、浸透度、と言い換えられるでしょうか、何かもひとつだな…の高さを表すものではないでしょうか。ウィーンの街にも、楽友協会に市民が集う合唱団があります。そうです、ウィーンフィルが合唱つきの楽曲を演奏する際に共演するのがこの合唱団です。そのことを、昨日本番中にふと思って、静かに感動していました。京都、おめでとう、ありがとう!今は我が街となったこのまち京都を、とても誇らしく思いました。
信じていただけるか分かりませんが笑、歌合わせも含めて全部で三日間、ほとんど通すだけのリハーサルで、5回目か6回目の通しが本番、といった風情でした笑。通すだけでもたっぷり2時間かかるうえに、様々な要素が複雑に絡み合いすぎて、細かいことをやりだしたらきりがないのでしょう。うまく行かなくても何か起きても半端なことでは止まってもらえず笑、やり直しもしてもらえず、音程練習を部分的に関係者だけ集まってしようにも、休憩時間もそこらじゅう人だらけで集まれる場所も静かな場所もなく…なので、とりあえず個々人が責任をもってマーラーの楽譜にある膨大な情報を正確に理解して音にする努力をし、合わなかった音程や音色やバランスやタイミングの修正は、次の通しでそれぞれの箇所を通りかかる(通りかかる!)時にそれぞれで次の一手を出し合って、そうやって本番までに最良の方法をみんなで協力して探る…そんな緊張感あふれる日々でした。
話は逸れますが、ここで、記憶に新しい「自由研究」という四文字熟語が思い出されます笑。びわ湖オペラで沼尻さんは、ワーグナーの厳しい音程の純度を高めるため、毎日山のように「自由研究」という名の宿題を出してくださいました(自由だけど全然自由じゃない、アレです)。宿題いっぱい小テストいっぱいタイプ。下野さんは、特に宿題は出さないけど、授業中にコテンパンにして、暗に“家でも勉強しないとエライことになる!”と思わせるタイプ。高関さんは、授業計画を綿密に立て、配布資料も全部完璧で、それに沿って授業を受けていたら全て丸く収まるタイプ。広上さんは、…時々、授業がなくなっちゃうタイプ!!笑。みんなで『えーーーー???』ってなって、あかん、先生教えてくれへん、自分らでやろう、となるアレです笑。担任の先生によってクラスの団結の仕方がいろいろだったり(団結するかしないかじゃなくて、仕方が、です)するのと、指揮者とオーケストラの関係は(主従関係でないところも含めて)似ているかもしれません。(※個人の感想です)
私たちは普段、広上先生のもとで放牧の牛のようにのびのびすくすくしているので、たまに物凄いスパルタな人が来るとそれはそれで燃えるというか嬉しくなっちゃうし笑、多少個性の強い人が来たらそれはそれで面白いからその人のカラーに喜んで染まってみたくなる。広上先生に信じてもらってるのが分かるので、広上先生のためなら何としても頑張りたいとも思う。何もかも細かく全部指示されたほうが断然楽だけど^^;、全くフリーの状態でこちら側に「考えて動く」自由を与えてもらっていることが我々オーケストラの地力を上げる結果に繋がっていると実感しているし、それは何より広上さんの大きな愛情だと、私たちは感じています。笑。
(※あくまで個人のふんわりした感想であり、実在の人物や事実とは全く関係ないわけではありませんが例えばのイメージとして温かくふんわりお受け止めください♪)
第2エスクラリネットを大フィルの船隈慶くんにお願いし、それから、3番クラリネットには、実は私の最初の生徒であった、倉内理恵さんに来てもらいました。私が上野で大学生をしていたときに、彼女は大人しい中学生で、当時の私は先生としては全く力も経験もなくて彼女には音楽の楽しささえ教えてあげることもできなかったと後悔ばかりが残るのですが、彼女はその後私の予想を遥かに超える頑張りを遂げ、何とも立派なプレイヤーに成長していました。素晴らしい先生方、環境と機会に恵まれて、そして何より彼女自身がどれだけ努力してきたかということを想像するに十分な5日間でした。頑張りすぎて愛を置き去りにするところまでは似ないでほしいと切に祈りつつ(とある心理テストが、私と彼女、そして現生徒の3人で同じ結果でした焦)、でもかつての生徒と並んで同じ舞台に立てることがこんなに嬉しいのかと改めて実感した嬉しい時間でした。りえちゃん、ありがとう!
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