別れの春(前編)

桜は、どんな名所で見るよりも、人それぞれゆかりのいつもの場所にいつものように咲くのを見届けるのが何より一番だと思うのですが、京都は、お寺と桜のマッチングとか、疎水の緑に映える桜とか、鴨川を彩る桜とか、やっぱりちょっとズルいですね。これを楽しむために京都に住んでるんだなぁ、と、少々大げさな気分にさえなってしまうというものです。

今日は、出勤途中、寺町通りを下って本満寺さんの枝垂れ桜を拝んできました。
(もう全然、私のしょーもない携帯カメラには入りきらない笑)

怪しいほどの美しさ。空の青。思わず声が上がります。
桜の脇に椅子を出してもらって座ってらしたおばあちゃんが、

「今日が一番満開ぇ?昨日はこんなことなかったぇ。」

と教えてくださって、さらに得した気分に。
御年98歳でいらっしゃること、ここからちょっと下がったところにお住まいとのこと、ここへん(出町柳界隈)はほんまに便利ぇ?ということなどを都合3回ずつくらい伺って、すっかり幸せな気分をおすそ分けしていただいた感謝をお伝えしてから、おいとましました。

鴨川はまだまだこれから。
岡崎の疎水のあたりはもう少し咲き進んでいて凄く綺麗です。
(どれもこれもほんとに酷い写真…笑)

明日11時から、ロームシアター京都でプロフィギュアスケーターの鈴木明子さんをお迎えしての『京都発見!クラシック』です。ラフマニノフ協奏曲2番のソリスト、岡田奏さん、美しい上にとっても素晴らしいです。ホールに来られてちょっと音出しされた時に、はっ、と見てしまいました。男性のような深いふくよかな音を、ピアノから引き出されます。木管首席揃って乗るコンチェルトは久しぶりで、それも楽しく。
青きドナウと、こうもり序曲のシュトラウス2つをリハーサルしていた時は、あー久々にKeiserschmarren食べたいなー帰ったら作ろうかなーと思ってたのですが、その後ラフマニノフが始まったら、そんなフワフワしたウィーン気分は彼方へ消えてしまいました、おそロシア。笑。


*****

教えに行っている中学生たちが素敵に可愛い、という話を、また書きますと書いたままだったことを思い出しました。

公立の、京都市立の某中学校に、数えたらもう11年も、指導に行かせていただいているのでした。
顧問の先生とご縁があって行き始めたのですが、コンクール前だけ突貫工事で教えても何にもならないから、定期的に基礎からキッチリ見させていただけるならということを条件に、お受けしました。言うのは簡単でも公立の学校では予算面や時間的なこと、様々な難しさがあるでしょうに、顧問の先生の熱意とご理解で、11年も。本当に有難いご縁でした。

最初の数年は本当に基礎のレッスンしかしませんでしたが、生徒たちも先生も本当によくガマンしてくださったおかげで年々確かな技術と情報と伝統がパートに蓄積され、行き始めて5年経つ頃には中学生とは思えない音を出すようになりました(最初は普通に中学生らしい怪獣のような音でしたよ笑)。だんだん私は細かい修正やアドバイスをすれば良い程度になり、だんだん曲も見るようになりました。曲の中で普段積み上げた基礎が生きることを実感すると励みにもなり、また、実際の音楽の中でどうやって音符を扱うか、旋律はどう歌えばよいか、自分以外の音をどんなふうに聴いていくか、休符をどう感じるか…この数年はそんなことがレッスンの中心だったように思います。もう放っといても良い音で吹くし、チューニングしなくても音程は合うし、スタッカートも達者に吹くし、そこらへんの簡単に音大に行きたくなる高校生とかよりずっとずっときちんと(笑)クラリネットを吹くようになって、いつの間にか多分あの子たちの親御さんよりトシになってしまったおばちゃん先生は、目を細めるばかりでした。

素敵に可愛い、の、話に戻ります。
彼女らが上手いから、素敵に可愛いと思ったのではありません。上手いのは、私がちゃんと教えたから当然です笑笑笑笑笑。(笑うとこです)

『だんだん小さく』(シュライナー)のパロディみたいな、吹きながらだんだんベル、下管、上管…と外していって最後はマウスピースだけになる、という曲が、吹奏楽版であって、その曲を次の本番でやるので見てほしい、とレッスンで言われた日がありました。
『だんだん小さく』よりはずっと簡単でシンプルなんですが、楽しく聴ける曲で、ソロパートをクラリネット全員で前にズラッと並んで立って演奏する、とのことでした。聴いてみると、演奏はとても上手だ(し、簡単だから別に特に言うこともない笑)ったのですが、せっかくだから何か振り付けを考えたら?と、私は言いました。中学生だし何やっても可愛い年頃なんだから、ドンドンやっちゃって!はい、いま考えてー!…と、しばらく時間をあげたのです。

…その時の、先輩後輩も関係なく、誰からともなく

「こう、は!?」
「こう、とか!」
「こんなんどう??」

と意見を出しあって、にこにこワイワイ、楽しそうにみんなでやりとりしている姿を見て、

うわぁ、素敵だー

と、思ったのでした。
私は自分自身が部活をしていた中学生や高校生の時、すごく真剣に打ち込んではいたけど、あんなに自然に楽しい雰囲気は作れなかった。誰かが目立ってリードするわけでもなく、黙って従うだけの子もいなくて、和気藹々と、でもただ仲良しグループなだけでなく、みんなで助け合って励まし合って、この子達は普段からこんな感じで活動してるんだろうなぁと思って、感激してしまいました。私も彼女らを指導するにあたり「楽しく」ということは常に言い続けてきたけど、こんな雰囲気は、日々彼女らを見守る顧問の先生方のご指導の賜物だろうなぁ、先生方から受ける愛情によるものだろうなぁと、心から尊敬する気持ちが湧きました。
私が勝手にしみじみ感激している間に、アッという間に意見はまとまって、すっごく可愛い振り付けが完成していました。それを更に私がオジサン目線でもっとわかりやすくブリっとした感じに注文をつけて笑、あぁ、本当に動画で皆さんにお見せしたいほどの仕上がりでした笑。その数日後の小さなコンサートで披露し、とても好評だったそうでした。

*****

先日のレッスンは、早い桜が咲き始めた、お天気のいい朝でした。学校に着いて、彼女らの待つ教室へ階段を上がりながら、聞こえてくる音出しの感じが、これはもう中学生のブラバンの音ではないよね〜、と、笑ってしまいました。本当に上手くなりました。
おそらくこの日が、最後のレッスンとなりました。顧問の先生のご異動が決まったのでした。

正式発表になるのはその日の午後だから、生徒たちには黙っていてほしいと言われたので、普通にいつも通りのレッスンをして、特にお別れも言わずに帰ってきました。帰りに、正門前に、離任される先生方のお名前一覧が貼り出されていました。真っ白い掲示板に先生のお名前が確かにあるのを認めて、…何とも言えない気持ちになりました。

すいません、あの子らを置いていく先生もお辛いでしょうけど、すいません、今、わたしは、先生に置いてかれるあの子らの気持ちです…

と、先生に言ってしまいました。
私も、中学2年の終わりに、尊敬し慕っていた顧問の先生が去ってしまう経験をしました。最後の夏を、先生と駆け抜けようと思っていた矢先のことでした。あの春の、身を引きちぎられるような辛さは、25年経っても昨日のことのように蘇ります。

いま、あの子たちはどんな気持ちでいるだろうと思います。
あの子たちなら、仲間と助けあって、賢く、乗り切っていってくれるだろうか。そう願うばかりです。




最近、昔のことをやけに思い出します。そろそろ死ぬんでしょうか笑。
(妙顕寺の夕刻。桜は早いのが少し咲いてました。正面の枝垂れはまだで、多分あと数日で天国になる予感!)


長くなってしまって、明日も早いので、続きは後編に書くことにします。


2コメント

  • 1000 / 1000

  • Naoko

    2018.04.06 12:37

    かーこ!(いや、そりゃ呼び方はこのままでしょう笑!) ありがとう!読んでくれたなんて感激! そうだよね。本当にね。でも、あの春もあの夏もあの秋も、振り向いたらいつも冷静なかーこが居てくれたことは本当に心強かったよ。ありがとうね。 K先生が(今はO先生だね笑)、あの時の3年生みんなに本当に感謝してると伝えてほしい、と仰ってたょ。私は知る限りの子たちの近況を先生に伝えて、そしたら先生喜んではりました😊全員覚えてるって!すごいよね、先生ってすごい。私やったら25年も前の生徒のこと、覚えてられないょーー笑 また集まりたいね☆
  • 永長良子

    2018.04.06 10:12

    たこ(今だにこの呼び方は失礼ですね。思わず中学生に戻ってしまいました)、元気ですか? 別れの春、本当に懐かしく拝見しました。 本当に25年も経ったのかなと思うくらいあの時の辛さは今も鮮明に覚えています。 また、3年生になって手探りながら必死に頑張ったあのときの思いも良く覚えています。 たくさんの生徒さんを楽しく、また、確かな技術や素晴らしい感性で指導してるたこの姿は見てはいないけれど想像がつきます。 これからも、陰ながら応援してます。 また、たこの生演奏聴きに行きたいです。 楽しみにしています。