爽やかシューマンから有終ワーグナーへ

いやぁ、爽やかなシューマンでした。
金曜日の定期演奏会、ご来場くださった皆さまありがとうございました。
ニコラ・アルトシュテット氏によるシューマン2曲とキルマイヤーの夜でした。

マエストロ・ニコラさんのチェロそのものの、繊細で、弦楽器的なアプローチで、非常に緻密で我慢強い(←感謝。)リハーサルが重ねられました。目の前の楽譜にはfやffが乱立しているのに体感としてはmfまでしか出せない(すぐ止められちゃう!笑)感じは、あの全然鳴らない淋しいホールを知っている我々には不安がいっぱいで、大丈夫かなー、これ客席だと多分mpまでですねーなどと話しながらでしたが、リハーサルが進むにつれて我々の耳もいよいよ開かれてゆき、そして本番はニコラさんもちょっとだけ大きめに振ってくださって、我々も時々

「えっ?いいの??」
「待ってましたー!」

となりながら(それでも恐る恐るでした笑)、なんとも楽しく本番を終えることができました。
あんな『ライン』は、我々にとっても初めてでしたが、お客さまにとっても、いつもの京響とはまた全然違う響きだったのではと思います。指揮者によってどんどん違うオケになっていくところ、毎回、最後まで諦めないで、指揮者の思う音になっていこうとするところが、京響のよいところだと私は思っています。油断ならないので、油断せず、ぜひ毎月いらしてくださいね◎

…というわけで、ハードだと思っていたシューマンが全然体力的にはハードじゃなくて、なんだか詩でも読んでいたような気持ち。不思議です。


終演した舞台の上で、メンバーで何を喋っていたかというと、もちろんワーグナーのこと。
毎年、ワーグナーが始まるひとつ前の本番が終わる時、

(あー、もう逃げも隠れもできないのだな)

という諦めに似た気分とともに、ワーグナーに乗るメンバーの何ともいえない一体感が高まります。もう、ここから帰ったら一目散にワーグナーに向かうしかないのです。だから帰りたくない笑。
(申し訳なさそうな顔に嬉しさを隠しきれないでいた人たちは降り番の皆さまです笑)


『ニュルンベルクのマイスタージンガー』、第一幕への前奏曲は単体でよく演奏会にとりあげられるのでよくご存知だと思います。

「あの一曲だけでも充分ヘトヘトになるのに、全幕って何?」

と、想像もつかないでいたら、全幕経験者の先輩(他オケ)に

「あんなもんじゃないよ、あれが5時間ずっと続く感じだよ。覚悟しといたほうがいいよ」

と言われたのが夏の頃でした。
…勉強してみたら、なんと、オペラって、誰も死ななかったり、誰も呪い狂ってなかったり、それから、地獄を見たり、戦争したり、大地を焼き尽くす炎や血の気の多い姐さん達が出てきたりしなかったらこんなに音楽は平和なんだ…と、感動しています。もう今までやったワーグナーの数々がどれだけキツかったか思い出せないけど、最後のマイスタージンガーが最重量でなかったことは確かだと(体力的にも精神的にも、音符の数も)、今のところ思っています。気が変わったらまた書きます笑。歌合戦すてき。平和だいじ。

第一幕の前奏曲でもそうであるように、クラリネットは、全幕あちこちで1人で吹かされて、油断なりません。みんな平等にしてほしいなぁ。まぁしょうがないか。まただいたい清らか役です。それから、前奏曲で出てくるメロディのあれやこれやが、全幕に渡ってほんとに散りばめられていて、だから、オペラ全体を聴いていても、初めて聴くツラい感じはあまりないと思います。まさか、最後の最後まで、あのスタッカート吹かされるなんて。ははは。
あとは、ベックメッサーの変な音階が頭にこびりついて、変です笑。


そんなこんなで、定期の後は、明日からの2週間に備えて体を整えたり、洗濯したり、掃除したり、食材の買い出しに行って冷蔵庫と冷凍庫に簡単な下拵えシリーズを揃えたりしながら、90ページおさらいしていました(おさらいしたけどまた忘れた!)。…謎に冷蔵庫の掃除をし始めたり、トイレの便座カバーやら布団のシーツやら手当たり次第洗濯したりして譜面台の前に座ることから逃げたりもしました。ふぅ。
最後までみんなで体調崩さず元気に駆け抜けられますように。