クオクマンさん

うまく休んで待つのが仕事、みたいな一週間の後、容赦なく吹きっぱなしな『悲愴』のリハーサルが始まって、まだまだ目が白黒している私たちです笑。


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トランプ大統領が米朝首脳会談にあたって

「会えば最初の1分で相手が真剣かどうか分かる」

というようなことを言っていたとネットのニュースでちらりと見て、あー確かに、指揮者もそうだなぁと思いました。

真剣かどうかはもちろん真剣ですけれども笑、初めてご一緒する指揮者さんについては、どんなタイプの方か分からないものですから、あらゆる可能性を捨てずにリハーサル前の準備をします。テンポなんかがどう来るか分からないから速くも遅くも練習するのは当たり前ですが、ほら、むーちゃーくーちゃーコワい人かもしれないんです笑。いやいや、会ってみればとても友好的なジェントルマンかもしれないけれども、会ってみないことには鬼将軍でない保証はどこにもないわけです笑。煮ても焼いても食えない人かもしれないし、いやいや、夢のように感動的な音楽体験をするかもしれない。結局のところ音を出すのは我々なので、どうであっても本番までの数日を心折らずに乗り切らなければいけないし、大きなソロがある場合は尚更、平常心で自室で練習していても十分キビシいパッセージを、一体どんな人に睨みつけながら(あるいは見守られながら)吹かなきゃいけないか分からないわけであるので、もう本当に、しなやかだけど絶対パキンと折れたりしませんなんて超ハイパー特殊素材みたいな心を、必死に探して探しきれなくてリハーサル当日を迎えます。練習場に向かう時はひたすら神に祈っています。

合奏場にマエストロが登場された瞬間に

(アチャー!)
(やべーーーー)

とザワつくこともありますが笑、これは見た目が鬼の形相だったり、見るからに神経質そうなスリムな猫背だったりする場合で、まぁ「ほら、人は見かけによらないかもしれないし!汗」と、一旦受け流します。
だけど、棒が振り下ろされてしまえばもう、それこそ最初の1分で、まぁ曲によっては3分もあれば、自分たちがどんな船に乗ってしまったのか、本番までの数日がどんなものになるか、だいたいもう明らかです。そこから、

さぁどうするか

を、めいめいで、またはみんなで、ぴぴぴぴぴと考えながら、静かに黙ってリハーサルが進むことになります。

…まぁ、見えているのは片方からだけであるはずがないので、指揮者さんからしても、初めて行くオケは、きっと同じような気持ちで、そして多分、音を出した瞬間に、我々のほとんどがバレてしまうのだろうなぁと思います。



さて。
今回初登場のリオ・クオクマンさん。

とっても素晴らしいです!念のため覚悟しておいたあらゆる心配が杞憂に終わりました。まだまだ若いですがバランス感覚が素晴らしく、すべてが自然で、我々に全くストレスをかけずに豊かに音を引き出してくださいます。特に、内面的で繊細な響きを、音の“弱さ”に頼りすぎることなく、ハッとするような美しさや儚さの表情を、我々の中に見つけ出してくださる気がしています。何度も演奏していて、何度演奏してもとても難しい悲愴ですが、今回はまた新たな景色が見える気がします。

前半の曲、『ブルー・カセドラル』の為に、水の入ったワイングラスや、中国風の小箱が合奏場のあちこちに見られます。日本初演となるそうで、これも楽しみ。
6/15(金)19時開演です、どうぞお越しください♪


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チャイコフスキー『悲愴』は、悲しすぎて、1日に何回もは吹けないと、本当に思います。悲しすぎて呆然とする。

第1楽章に何度か出てくる 
“incalzando”(せき立てるように、との指示)の場面は毎回胸くるしくなるけど、弱音でincalzandoが来たときが本当にたまらない。
そしてクラリネットに二度出てくる有名なソロの場面で

“dolce possibile”(可能な限り甘美に)
“con tenerezza”(いとおしげに)

などなど、チャイコフスキーからの親密なメッセージがそこここに添えられていて、彼の思いをどうやって音にしたらいいものか、もう、ただただ切に息が苦しかったり音程を狙うのがキビシかったりする云々は傍に置いておいて、全力で取り組みたいと毎回思います。
“Adagio mosso”なんていうのは本当にえもいわれぬニュアンスだと思うし(Adagio=ゆっくりと、静かに / mosso=動きのある、動かされた)“dolcissimo ma espress.” は、人間の、一番奥から出てくる優しい気持ちだと思う。間違ってるかもしれないし、単なる私のファンタジーかもしれないけど、楽譜にある言葉をいっぱいに想像して感じるのが私は好き。
pppからのcrescならびにanimandoと書かれているこの一番苦しいひと節を、ppで吹いていいよと言われたのは初めて。ppもdolcissimoもどこへやら、もっと吹けもっと吹け!と煽られるばかりだったったけど、今回の若きマエストロは

「夢の中で懐かしむように、抱きしめて吹いてあげて」

と。
それはそれで難しいけど、なんか感激しました。小さい指示はpppppまであるから、ppはそれほど弱いわけではないけど。

がんばろうっと。

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