春の雨

昨日は、すっかり春のような明るい光に包まれたお天気で、お昼を食べに行ったいつものお店のおかあさんと

明るいですね、もう春ですね、…（中略）…だけどまた暑い夏が来ますね、寒い寒いって言ってたけど、暖かくなるのは、ゆっくりでいいですね、ほんまですね、夏は嫌やヮー！まだ冬でえぇヮー！

…と話していたところです。

今日は二十四節気で「雨水（うすい）」というそうです。季節にまつわる素敵な言葉ってたくさんあるなぁと思っていたら今日は雨が降りました。練習場へ向かう鞍馬口通を傘をさしながら歩いて、今年も春が来るなぁ、と思っていました。

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頭の中で鳥がたくさん鳴くのを抑えながらラフマニノフを吹いた先週。ジークフリートが始まってみたら今度は一転ラフマニノフが頭に残って離れなくて、なかなか手強いねぇと笑いながらリハーサルが日、月、火曜と進んで、今日16:30、ようやく全幕ひととおりオーケストラリハーサルが済みました。

（数字は第3幕の小節数。2幕は1910小節。1幕は2983小節。）

さすがにもうラフマニノフが鼻歌で出てくることはなくなりました。そのかわり、少しでも頭を傾けたら耳からザラザラザラザラ〜っとワーグナーの音が出てきてしまいそうで、頭をまっすぐして、じっとしています。イメージです笑

ジークフリート、実は私は2度目です。前回は、まだ学生の頃、飯守泰次郎さん指揮/東京シティフィルさんの公演に、3番クラリネットでエキストラとして参加させていただきました。

あの頃は、まだオーケストラで吹く経験も浅く、オペラの経験はもっとで、それでいきなりワーグナーのコレ…泰次郎先生の棒の見方も全然分からないし（笑）、オケはものすごいサイズだし、ワーグナーの音の洪水に免疫もなく、ひたすら長いし、勉強してもしても全然覚えられないし、外は灼熱の8月で、もうほとんど呆然とパニックの間くらいだったことをよく覚えています。3番クラリネットは1.2番に比べると吹くところはずっと少ないから楽なはずなんですが、当時は待つことにも慣れていないし、しばらーく休んでたまに音符があると思ったら3番なのにどソロでビックリしたり（焦）、ずっと彼方にいらっしゃるイングリッシュホルンの方とユニゾンだったり、肝がつぶれる思いとはこのことだと…ワーグナーなんて二度とごめんだと、あの時は思っていました。そして、あんな大編成なのに1番クラリネットの方にはしょっちゅう難しそうなソロがあって、

…いったい、自分の頭や体や心の、いったいどこを探したらこんな場であんなソロを思い切って吹く勇気が見つかるだろう…

と、あの頃の私は本当に、すごいなとか、尊敬するとか、そんなのを軽く通り越して、ただただビックリしていた気がします。

あれから20年。（←きみまろ風）

2度目のジークフリートを、その1番クラを吹く立場になって、今の私がいったいどんな風に感じるかというのは、今回、本当に楽しみに思っていたことでした。

まず、3番クラリネットは、今回玄さんが担当されていますが、やっぱり難しいパートだゎ、と思いました。待って待って、たまに出てきてあんなシブい仕事をするのは、経験も力も足りない若者には難しかったに違いない…当時のシティフィルさんにどれだけご迷惑をおかけしただろうなと、ドンヨリするばかりです。今さらドンヨリしても仕方ないので、チャンスと学びの場を与えてくださり、そしてきっと黙ってたくさん許してくださった皆さんに感謝するばかりです。ありがとうございます。

そして1番クラリネットは…想像通り超大変でした笑。大変なのはみんな同じなのでそれは冗談ということでお許しいただきたいですが、1番に限らず、クラリネットという楽器の凄みを、今回ワーグナーの音楽に改めてまざまざと感じさせられています。地底のグロテスクと、楽園の明るい光の両方に生息できる楽器は、他にないのです。だから、ただ楽譜の量が多いとか、ただソロが多いとかではなくて、吹くたびに全く違うキャラクターでいかないといけなくて、本当に忙しい笑。でも、全部を驚くほど違えて吹きたい。間違えずに吹きたいとはもはや思わない。ただひとつの音でそこにいる全員がハッとするような音を、私はピットの暗がりから放ちたい。（でも間違えずに吹きたいです…）

明日からびわ湖ホール入りで、いよいよ歌合わせが始まります。約半月続くオペラ期間、長い長いと思っていても、歌手の人たちとこんにちはをした日からがアッと言う間なのは毎年のこと。タフだけど、毎日たいせつに、私に出来る全部をがんばりたいです。

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無事に3月をこえて春を迎えられますように。がんばります。