パウルとヨハネスとマックスとびわ湖
他の2曲と比して、明らかに時代の足音や匂いがするところを、皆さんと感じたいと思いました。ピアノも、ブラームスやレーガーにはないような、冷たい黒い鉄のような音がするところがある。クラリネットも、チャーミングさとそら恐ろしさが表裏一体のような、逃げ場のない苦しさのような、もう力尽きた諦めのような…。技術的にも、これは学生時代に一度吹いたことがあって、吹いたけど、あの頃の私には全く歯が立たなかったように感じ、「クラリネットを本当にちゃんと吹けるようになったときに、きっともう一回吹こう」と思わされた曲でした。表向きの技巧的な難しさでなくて、発音とか、支えとか、音色の狙いとか、音と音の繋がりとか、ピアノとどう対峙するかとか、なんかそういうことです。それでもやっぱり届かないところがあった。もうちょっと手応えがいつか掴めたら、もう一度チャレンジしたい。
ただ、若い頃には、あの熱情的な音楽と自分の出処不明な溢れるパッションをどうやって音に乗せたらいいのか完全に持て余していたのを、それぞれに何十回もさまざまな舞台で吹いたり弾いたりしてきた経験を経て、それぞれにうまく力が抜けてきて、音符と音符のわずかな隙間に歌を感じられたり、お互いの思いや流れは練習で決め込むことなく本番までその場の対話として楽しむことができるようになってきたのは、最近の嬉しさです。
レーガーは、もう、第一楽章冒頭がいきなりppから始まって、さらにdim.するというね…。ppは第一楽章に32個もあって(pppは8個、おまけに最後はppppで終わる!そりゃクラリネットはいくらでも弱い音出せますけど笑)、細かい松葉(<と>)はそこらじゅうに、〔rit....a tempo〕のセットもあちこちに。この究極の繊細さを勝負したくてバロックザールを選んだところも実はありました。が、かと思えば冗談かと思うような音のスプラッシュマウンテンがピアノに(ピアノのみに!笑)現れて気の毒になったり笑笑。ナイーブすぎて極端すぎて友達にするにはだいぶ面倒くさそうな笑、大男マックスを感じました。
でも、おなじ〝espress.〟の表示でも、ブラームスだとその箇所で深く確かめるように味わいたい感じがするのに対して、レーガーの譜面にそれが出てくるときは、はっと気持ちがはやるような、内側へ内側へ向かいがちな彼の音楽がその箇所でフッと外へ向かって動きだすように感じるのが、私の気のせいかもしれないけど、そんな風に感じたんですね、それが、とても面白いと思いました。マックス青年、30代半ばだもの!若さってみずみずしいものですね!
不惑の亮さんとわたし。
©︎たすくさんのおかあさん(美人)
オーケストラで吹くようになって15年目です。オーケストラで吹くために必要だった技術や、オーケストラの中で求められ突きつけられ対峙し探してようやく少しずつ掴んだ音の連ねかたや時間の動かしかた、遅すぎるテンポとひたすら闘ったあの日や(涙)、一流の音楽家に学んだたくさんのことが、私を悠々と助けてくれている。今回の3曲と向かい合いながら一番感じたのはそのことでした。最高の人生です。だけど、全然足りないことがある。まだ頑張るけど、できたら早く生まれ直して、今度は2歳からピアノを弾いて、もっと早めにしっかりアレもコレもしたい。
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びわ湖へ向かって必死に歩く一週間が終わりました。
今回はエキストラが必要だったので、この春大学を卒業してフリー1年生として活動し始めた生徒(私のクラスに来る前は、祐子さんのお弟子さんでした)に来てもらって、3人一緒に並んで吹きました。初めてのプロオケでのお仕事、心臓から手が…じゃなくて(疲れてる)口から心臓が出るほど緊張しっぱなしの一週間だったと思いますが、緊張しながらも立派にプレイする彼女の音と姿を隣で感じて、先生たちとしてはとても嬉しく誇らしく、あぁ今まで教えてきたことは間違ってなかったと、しっかりとこの世界で生きていくための装備を彼女に調えてあげられたと、もちろんそれは彼女の努力をサポートしただけなのですが、本当に良かったと安堵しました。祐子さんとびわ湖を眺めながら昼間っからビールで乾杯したい気分でした(飲めないけど)。ここからは本人の頑張り次第。粘り強く、しなやかに、泳いでいってほしいです。
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リサイタル明けて学校レッスン再開な一週間でもありました。
生徒たちがハッピーバースデーを歌ってくれ笑、寄せ書きの色紙をくれましたよ。
中をお見せして自慢したいくらいですが、自粛◎。普段会うし喋るしLINEで個人的なやりとりをしたりもするけど、たまに直筆の字を見ると改めてハッとすることもあります。その子らしさが見えてきます。
教える仕事は、しばしば投げ出したくなるときもありますが、私を鍛えてくれ、そして支えてもらってると気づきます。みんなありがとう。がんばろう。
ペライアを聴いています。
無言歌を聴きたくなるのは、穏やかな夜の証拠。
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