ブラームス お祈り週間

それで、ブラームスです。
ブラームスが人生の終盤にクラリネットのために遺してくれた珠玉の室内楽3作品のうち、Op.114と120-2を演奏します。

今さら練習しないと吹けないようなところは特にはないけど、ひとつのフレーズ、ひとつの音、ひとつの発音、ひとつのレガート、そのどれもに、
「絶対こう吹きたい」
というのがあって、それは、どれだけ練習を積んでも、当日その時に全て揃うか分からないほど繊細で、大切なものなので、ブラームスを準備する時はいつも、幸せなんだけど、息が止まりそうな、悶々とした時間を過ごすことになります。きっと皆さんそうではないかと思います。
おまけに、思う音を実現するには、その日その時に
「ぜんぶ思ったように吹ける素晴らしいリード」
が手元にないと、どうにもこうにも無理なので、もう、リードケースの中のリードたちを、毎日、吹くような吹かないような、半歩下がって様子を伺うばかりのような日々になるので、はぁ、生きた心地せず。
(春は、それでなくてもリードがボケるので、毎日ころころと様子が変わるから、ほんとに寿命が縮みます…同業者のみなさん…そうですよね…そんなことありませんか…トホホ…)

でも、今週はようやく、もう他に本番がないので、やっと、ゆっくりと(ほぼ毎日学校に行く以外は、ですが)、ブラームスと自分のためだけにリードを触っています。あんまり吹きすぎると変わり果ててしまうかもしれないし、と言って、いつまでも腫れ物に触るようにしていると、どれもこれも新しいまま仕上がらなくて焦ることになる(←私は断然この失敗が多い派です…)から要注意です。
ま、でも、本番は、良い子にしていたら、神様が降りてきてくれるので、たいてい大丈夫。たぶん大丈夫。…お願い大丈夫でありますように。祈りながら良い子にしているしかない今週です…ドレスも入りますように…どうかどうか…


日曜日ごとに東京へリハーサルに通い、この日曜日もとっても幸せな時間を過ごさせていただきました。
悦子先生とブラームスをお手合わせいただける日が来るなんて。もちろんレーガーの時も思いがけない幸運に驚くばかりでしたが、ブラームスまでご一緒できるとは。まだまだ夢のようで、合わせのたびに感激しています。
2番のEs-dur、とっても晴れやかに、これ以上ないというほど良い音で始めたいんです。そのために、どうしたらいいか、一生懸命練習してきました。それから、レーガーのあの複雑深淵な3つのソナタを経験してから改めて臨むブラームスは、悦子先生ともお話ししましたが、レーガーを知らなかった頃の私とはまた全然見え方感じ方が違って、それにも感動しました。
耕治先生は、悦子先生とご一緒に、シューマンの歌曲「女の愛と生涯」を演奏されます。そして、悦子先生のソロは、ブラームスの、「R.シューマンの主題による変奏曲」を演奏されます。
シューマンとブラームスが、こうも違う、そうだよね、とリハーサルをしながら話していましたが、悦子先生は1人でその間を行かれるので、すごく難しいだろうなぁと感嘆するのとともに、今回のプログラムの妙を改めて思っています。
プログラム最後、ブラームスのクラリネット三重奏曲は、今回はチェロの代わりにファゴット版。ファゴット以外の作品をファゴットで演奏することに長年取り組まれている耕治先生が、どんな風にアプローチされるのか、とても興味深く楽しみにしていましたが、なるほど、と思うことも多いです。そして、チェロだとどなたと演奏してもいつも同じように音程が合わなくて同じように苦労するところが、今回は何ともなくスパッと合って、やっぱり弦楽器の人独特の音程感っていうやつなんだろうなぁ…と、へぇぇ、ほぉぉ、と思ったりもしています。いつもは息を吸う人が私だけだけど、今回は2人いるからブレス位置の相談も要るんだなとか。新しい発見も楽しいです。

それにしても。
リードがうまくいきますように。
ドレスが入りますように。
世界が平和になりますように。

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