懐かしい背中

実家のある町(村)も、桜が美しいところです。川沿いにずうっと桜が植わっていて、小学校の通学路は桜のトンネルでした(桜の後はもちろん毛虫地獄と化しました)。
京都の、あの[桜とお寺]の組み合わせというのが反則技級に素晴らしいのはもちろん間違いないのですが、でも、桜って、名所や人気スポットに押し寄せたりするよりは、自分の町やゆかりの町の桜の、毎年おなじように咲いてくれる姿や、毎日だんだんに咲き進んでいくのを楽しむのが、何よりの贅沢なように思います。
神戸で仕事だった今週、地元に帰ったらまだ桜がじゅうぶんに美しく咲き残っていて、とっても得したような気持ちになりました。
(晴れの屋外で撮るときは大抵画面が見えてないので当てずっぽうで、必ず電信柱や本意でないいろいろが写り込んでいます)
***
神戸室内さんにお邪魔したら、というか、楽譜と一緒に送られてきたメンバー表を見た時に小躍りして以来ずっと心が春爛漫だったのですが、懐かしい背中が!待ってくださっていました☆
うふふーーーーーー!

「この背中!この背中!」
と、私が後ろから拝んでいたら(うそです、撫でまわしました〜◎)、清水さんが
「あー、その声その声!久しぶり!」
と笑。
左隣には何と九響のファゴット・マイラブ埜口さん、トランペットには心の兄・神代さん(現 大阪教育大教授)が来られていて、大好きな人がいっぱいの中で嬉しいリハーサルが始まりました。

もっと楽しみにしていたのは、鈴木秀美マエストロのもとで音楽ができること。
初日、ひとまずベートーヴェンの第1楽章をサーっと、まぁ勝手知ったるメンバーなので大きな破綻もなく終わりまで通ったあと、
「皆さん、よく分かってらっしゃるだろうけど、くれぐれも、こんなところだろう、こんなもんだろうと思って部屋の真ん中に寄ってこないでくださいね、いい音楽は部屋の隅っこのほうにしか無いですから(にこ!)」

…もうこれだけで、充分でした。ここに来て良かったと思いました。

[部屋の真ん中に寄ってくるな]というのは、…要するに、この時代のこの音楽だったらこんなスタイルでやるんでしょう、おまけに、秀美さんだったらだいたいこんな感じで合ってるでしょう?と笑、皆が間違えずに「正しい部屋」に入ったことに安心して、疑わずにどかっとその部屋の真ん中に腰を下ろしている状態のことを想像していただけたら、だいたい外れていないと思います。で、たしかにその部屋で合ってはいるけれども、疑わなくなったら終わりだということ。分かったような顔してやっちゃったら、その時点で音楽は死んでるってこと。その部屋の広さを自分の足で確かめよう、いつもわくわくして部屋の端っこに宝物がないか探しに行こう、それが音楽ってモノだからサ!
…まったくの図星で、一同苦笑。だけど、みんな、大学生の頃のようにわくわくして、楽しく、毎日合奏していました。
そうなんです。ある程度ちゃんと勉強して、プロになってある程度のレベルで仕事をしていれば、だいたいのことはもう分かってきて、分かったような気になって、…若い頃なら、正しい部屋に間違えずに入ることも、はみ出さずに居ることも、そのこと自体が結構難しいんです、だけど、…そうだなァ、そんなつもりは毛頭なかったけど、部屋の真ん中に居ちゃったなァ!先生ごめんなさい〜!

もっとエッジの効いたsfを。もっとチャレンジを。もっとびっくりを。…決して気まぐれや思いつきではないし、スタイルから外れるようなことは仰らないし、誰もやってないことをやってやろうみたいな変な野心(変な野心!)もないし、私たちが今まで勉強してきたことは全部合ってるなと思うようなことしか(ほぼ)仰らないんです。でも、秀美さんの手にかかれば、ぜんぶが大冒険になるから不思議です。音楽って心の底から楽しいもんなんだ、あぁ生きてて良かったと、秀美さんとご一緒させていただくといつも思えます。最高です。

ティンパニは元読響首席の菅原淳さん、オーボエの1番は元名フィルの山本直人さんでした。初めてご一緒させていただきましたが、もうさすがというしかなく、名手のわくわくにわくわくしっぱなしでした。やっぱり、すごい人って皆さんほんとにすごい。
本番前の舞台袖でも、音出しも忘れるほどお喋りしっぱなし(マスクあり)の楽しい時間で、だけど舞台に上がるともっと楽しかった。生き返りました。これでまた、あと3ヶ月くらい元気に頑張れそうです。

京響のスプリングコンサートをお休みいただいてしまったけど(楽しみにしてくださった方、すみません)、さんざん悩んで苦労してお休み申請して本当に意義がありました。私にはどうしても必要な機会でした。来週の兵庫公演、頑張ります!

寒さもなくなって、まだヘビや蚊の心配もないこんな時期は、子供のころは来る日も来る日も近所の田畑で春の小さな花々を摘んで遊んでいました。だから嬉しくて立ち止まってしゃがみ込んで写真を撮っていると、畑のおじさんが声をかけてくださって、こっちに白いレンゲが咲いてるよ、珍しいから見てって、と教えてくださり、ペンペン草で遊んだり草笛を吹いて遊んだりしたことを懐かしくお話ししました。きっと、私が子供の頃にも会ったことのあるおじさんだろうなぁ。

姪っ子が、ピアノの発表会だといっておめかしして出かけていきました。お辞儀の仕方を伝授しておきました笑
Naoko Kotaniguchi Official Blog

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