兵庫公演

マエストロ・アクセルロッドが、無事来日、京都市内の某ホテルで隔離期間を過ごされているとのことです!
来週の4月定期は、ジョン・アクセルロッド氏の京響首席客演指揮者就任記念演奏会となります!!良かった!とても良かった!ブラームスの祝典序曲と交響曲第2番、第4番。本来なら昨年9月にマーラー『復活』でのお披露目となるところでしたが、コロナによる延期と、曲目変更を経て、ようやく叶います。楽しみにしてくださっていた皆様にもご心配いただきましたが、ぜひぜひご期待のうえ、安全に気をつけてどしどしご来場くださいませ…!
私たちも、久しぶりの明るいニュースにわくわくしています。このまま何もなく無事にコンサートの日を迎えられるよう祈るばかりです。たくさんの困難を引き受けて来日くださったマエストロと、マエストロの渡航実現にあたってはマネジメントのアマティ・Aさんのご尽力がとても大きかったと伺っています、その他にも、お力尽くしてくださった皆々様に感謝します。
がんばろうと思います!!!
(久しぶりの英語でのリハーサルも!嬉)



いま、西宮に向かう阪急電車の中です。
京都市交響楽団 兵庫公演。兵庫県立芸術文化センターで、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とマーラー第5番。これもコロナで昨年の公演が中止になり、久しぶりの芸文センターをとても楽しみにリハーサル2日間を終えました。
うふふ。いいベルアップっぷりでしょう。
尊敬する先輩から譲り受けた、ヨーロッパの古い木彫りの人形です。
去年これをいただいた頃には、再びマーラーを演奏できる日なんてもう来ないんじゃないかと思うくらいでしたが、もしマーラーをできる日が戻ったら、きっとこの子を紹介しようと思っていました。

そうです、マーラーといえばベルアップなんですが、5番はマーラーのシンフォニーの中でも特にベルアップが多くて、首、背中、腰、そして手首を痛め気味です。
楽器を吹く時の構えは、顔(口)と楽器との角度が重要なので(角度が変わると音程や音色がおかしくなる)、ベルアップといってもベル(楽器)だけ上げればいいのではなくて、顔ごといくんですね。同じようにベルアップするオーボエなんて楽器もありますが、クラリネットはオーボエよりも楽器を構える角度が鋭角なので(普段、オーボエより下を向いていることをご存知でしょうか)、同じ高さに上げようと思ったら、オーボエよりずっと上を向かないといけないわけです(なので、普段ほとんど顔に対して垂直に楽器を構えているトランペットなんかは、ベルアップしても顔自体はちょっと上げるだけで済みます)。そのまま目を天井にやったら照明で目がくらむし、顔を上げてから
「やばい、覚えてない!」
と思って無理やり目だけ楽譜に戻そうとすると、眼球の限界に挑むことになるんです笑。いやいや、5番はベルアップ箇所が多すぎて長すぎて暗譜はムリ!
…話を戻しますが、顔をグッと斜め上に持ち上げて、支える右手は普段より変な伸び方をしたまま大根一本分の楽器を支え続け(るのと、意外に速い上げ下げの動作を迫られ)、首は張り、背中と腰は反り…で、だいたいベルアップの指示があるは大音量でぶちかますことを意図されている時ですから、その姿勢で思クソ吹くということになります。そりゃもう、一発で整体院に予約です。
ざっと数えたら、ベルアップ、20回だったかな、22回だったかな、ありました。うぐぐ。
そして、持ち替えもざっと12回(たぶん。あとでもう一回ちゃんと数えます)。まぁでも、Bb管とA管の2本で持ち替えなので、まだマシなほうです。持ち替えも、大急ぎなことが多いので、しっかりグリスを塗って滑りを良くしておかないと、回数が多かったりタイミングがハードだったりすると手首を痛めるので要注意です。

マーラーの楽譜には、めまぐるしいテンポの変化の他、マエストロ・マーラーからの直接の指示が山ほど書いてあります。めまぐるしいですが、マーラーが、オーケストラが一体どういう性能や特性をもった乗り物かということをどれほど深く的確に理解していたかということを本当に思い知らされます。
大オーケストラは人数も多いので、まるで大型トレーラーを操縦するような難しさがあると想像しています。そして、能力の高いプレイヤーが集まって高いアンサンブル力をもつオーケストラであれば、さながらスポーツカーのような機動力を兼ね備えます。でも、基本は大型トレーラーであることを忘れては事故が起きるし、スポーツカーのように動かすにはドライバーの高い技術とセンスを要するのです。
だから、マーラーのどんなに細かな指示も、それを完全に掌握する音楽性とバトン技術とセンスとバランスと運動神経を持った指揮者と演奏させてもらった時は、全ての指示がまったく自然に魔法のように、必然となることを知りました。これは、私が学生の終わりの頃、幸運なことにインバルさんが都響さんでマーラーチクルスをされていた(のかな?)頃に、マーラーのいくつかをエキストラで経験させていただいた時に、心から思ったことです。あの時に、インバル先生と都響さんにマーラーが何たるかを教わった気がしています。あんな、全部が腑に落ちる、魔法にかかったような気持ちになったことは、残念ながら、あの後は一度しかありません。でも、いつも、あの時のことを思いながら、マーラーは演奏しています。


冒頭のハラルドのソロが、本当に素晴らしいです。

それから、メンデルスゾーンのソロの金川さんも、恥ずかしながら私たちは初めてお聴きするしご一緒するのですが、もう、冒頭のメロディ数秒で、オケの皆の目の色が変わりました。どうぞどうぞ、ご期待ください。
なんか、ああいう音楽をもった人って、たまにいますね。技術をひけらかすのでなく、自分自分と前へ出るのでなく、派手なことも目新しいことも何もしないのに、ふわっと人の心をひらくような平和と幸福の温かい力をもつ音楽をする人。とっても艶やかな音で。すごいです。金川さんのメンデルスゾーンを聴くだけでも、今日のコンサートは甲斐があると思います。あ、ハラルドのトランペットと。
Naoko Kotaniguchi Official Blog

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