広い世界

ドバイに拠点のあるヤマハが提供している、若い人のための奨学金オーディションの、動画審査に参加させてもらっていました。

エントリーする国や地域によって、音楽学校など教育環境の有無、文化や歴史や経済状況などなど様々に違いがあるので、とお聞きしていましたが、聴かせていただいて、やはり大きくさまざまでした。


カザフスタン 9名
ウズベキスタン 6名
キルギス 1名
イラン 10名
アゼルバイジャン 4名
アルメニア 6名
ジョージア 2名
ウクライナ 26名
モロッコ 1名
ザンビア 1名
アルジェリア 1名
南アフリカ共和国 12名


自由曲の選曲も録音環境もかなり違うので審査はとても難しかったですが、私なりに一生懸命しました。最初にまず先入観なく聴いて評価を済ませた後、地図帳を開いて、リストにある彼らの国籍や生年月日、画面に映る色々を見、いろんなことを想像しながら、Youtubeの限定公開が私に開かれている間、何度も聴きました。本当にたくさんのことを思いました。

若い素晴らしい演奏がいっぱいでした。パイプオルガンの映る立派なホールで吹いていた子もいれば、すごくリビングルームの子もいました。循環呼吸が標準装備らしき国もあり、ヘビ使いのサーカスみたいな私の知らない曲もたくさんありました。カラオケ伴奏に頑張って合わせて吹いていた子も、扇風機が背景だった子も、もはや原形ををとどめないオーソレミオも、すべてが愛おしくなりました。全体に女の子がとても少ないことも、印象的でした。

特にウクライナの子たちのことを思いました。インフラ爆撃により電力供給が不安定な中、限られた時間で演奏を録音し応募してくれた学生がやはり多かったと、後に聞きました。限られるのは電力だけでないと、想像に難くありません。一方で、ここにはなかったロシアの若い人たちのことを思わずにいられませんでした。また、対象地域でありながら全くエントリーのない国もあるし、そもそもずっと紛争や貧困の中にいるような子どもたちも。翻って、何不自由なく暮らせる日本にいても、やはり悩み深い暗闇の底にいるような子もいます。

何から思ったらいいか分からないような気持ちですが、まずは、私は私の目の前にいる子たちから、精一杯愛していこうと思います。そして、あまりに広くて深い世界に対して、何も出来ない自分にがっかりせず、何も出来ないながら、なにかできることする2023年にしたいです。

Naoko Kotaniguchi Official Blog

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