天竜へ

雪の京都を抜け出して、1/28は浜松市・天竜壬生ホールへお邪魔してきました。

コロナの影響で3年越しのコンサート。天竜楽友吹奏楽団・ヤマハ吹奏楽団OBメンバーの皆さんによる合同フェスティバルバンドさんの会にお招きいただきました。
天竜楽友吹奏楽団さんは、元ウィーン・フィルのカール・ヤイトラーさんの薫陶を受け、ウィーンの音楽でウィーンの田舎バンドの雰囲気を楽しまれているということで、なので、共演の曲にご提案いただいたものも私の知らなかった作品ばかり。今回は、当初予定していましたEsクラリネットのための作品が楽団さんの事情により取りやめになって残念でしたが、天竜楽友吹奏楽団さんのおかげで私も新しい作品に出会うことができ感謝しています。
そして、長く活動がままならなかったコロナの間に天竜楽友吹奏楽団さんの団員さんが減ってしまったとのことで、今回は急遽、ヤマハ吹奏楽団OBメンバーさんが集結してくださり、合同演奏会というかたちに。
そういうわけで、今回は、私が今使わせていただいているヤマハの楽器の、開発のきっかけを作ってくださった方、そこから開発・設計、改良の段階を経て長くお世話になっている恩人ともいうべきエンジニアの方々、毎日工場でヤマハのよい楽器を日本全国・世界へ送り出してくださっている技術の方々…『私が今この楽器を持ってここに在るのはこの人のおかげ』という恩人の方々が、舞台の上にも客席にもたくさん居てくださって、見守ってくださって、どうにもどうにも、嬉しいばかりの昨日今日でした。
コンマスの岩倉さんは、もう10年以上に渡って私を見守ってくださっています。クラリネットの名手だからこその濃やかで鋭い視点で、困ったときは岩倉さんに楽器を診てもらったらもう間違えるように蘇るのです。私の神様。神様と一緒に吹けて、今回は本当にハッピーでした。それから、さらに夢のようだったのは、私が悩み深き学生だった頃、銀座のアトリエでいつも楽器のメンテナンスをしてくださっていた日比野さんと、四半世紀を経て再会が叶い、なんと共演までできたこと!楽器がおかしいのか自分が下手なのか分からない〜とメソメソしながら銀座の街をトボトボ歩いて、ドアの向こうでいつも朗らかに待っててくださった日比野さん。やさしい笑顔と声で、大丈夫だよ、と言ってもらったら、もうそれだけで、楽器も自分も大丈夫に戻れたようでした。その時のままの柔らかい日比野さんのままで、迎えてくださいました。たくさんの人に助けていただいて、今の私があることを、改めて深く感じた週末でした。


学生の部活ではない、大人のバンドさんにお邪魔するのは本当に久しぶりなことでしたが、皆さんが取り組まれている様子を拝見していて、さまざまな世代、本業、バックグラウンドをお持ちの方々が、人生の相棒に楽器や音楽を手放さずにそれを楽しんでいらっしゃって、仕事でも生活でもない「私」としての時間があることをとても素敵だと感じました。そして、皆さんの音がひとつところに集まる、その素晴らしさをとても思いました。3年ぶりの本番を「格別だ」と仰っていたことも、司会の方が「生の音楽って、こんなにいいもんなんですね、久しぶりで、感激いっぱいです」と舞台袖で興奮していらしたことも、印象的でした。こういう場が、守られなければならないと思いました。まだまだコロナが落ち着かない中でも、必要十分に気をつけながら、想像力を働かせて、思いやりの気持ちを持ち寄って、健康に、楽しく、人生を楽しむ機会を守っていきたい。その先に続く子供たちの未来のためにも。大人が、その勇気と賢さを持たなければならないと強く感じるこの3年です。それから、私は音楽を仕事にしてしまったので楽しいばかりではなくなってしまいましたが、それでも皆さんがあんなに楽しんでらっしゃる「音楽」の、私もその楽しさを忘れずにいなければと思いました。
Naoko Kotaniguchi Official Blog

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